主に、旅の炭水化物

各地、食風景の点描

トルコ

山麓のイワシ盛り~トルコ・ドーバヤズット

ベージュの地に、意味ありげな幾何学模様――おうちの絨毯はやはりいい、と、すっかり座り込んだその感触をズボン越しに受け止めながら、湯船に浸かる如くのホンワリ気分で、薄ピンク色の壁、雪で白光りする窓の方などを眺めている。 向かいに座る男の子が齧っ…

「朝食は如何?」~ディヤルバクル・トルコ

並ぶ並ぶ並ぶ…。 黄、白、赤、紺 、茶…。とりどりがそれぞれ、カレー用大の器の上に載り、きゅっとかき集めたよう所狭しと。 宴会だろうか?…目が、パチパチする。 壮大な食卓――いや、「卓」ではない。横に敷いた絨毯の上に、テーブルクロス…いやテーブルじ…

「ヤグレ」一日の始まり ~マラテヤ・トルコ

一瞬、時が止まったような沈黙があり、そしてその口から出されたのは意外な言葉――私の名前だ。 入口からおそるおそる足を踏み入れた、そのたった一歩で、立ち尽くしてしまった。 と同時に釘付けになったのは、この空間に踏み入る前からムンムンと漂っていた…

ヘラを制す ~ディヤルバクル ④

「トントン」おめかしされ、ドキドキとその時を待つ生地に、向かいからニョッと伸びてくる大きな腕――Fさんである。 眠っている子供を抱きかかえるように、両手を生地の下に差し入れて、台からさらってゆく。宙で生地が、だらんと素直にしだれるので、素早く…

成形演奏会 ~ ディヤルバクル③

「窯」に隣接された、タタミ一枚程の成形用台の上には、手粉がたっぷりと振りまかれている。一見、おが屑を連想するその薄茶色は、「ふすま」のみなのだろう。つまり、小麦を小麦粉へと製粉する際に、白い粉となる胚乳から分離される「外皮」部分である。こ…

「フランジャラ」に駆ける青春 ~トルコ・ドウバヤズット① 

ザーッ、ザーッ、ザッ、ザッ…。 「窯」の中から次々と現れるパン。引き出されるその勢いで青色の台の上を滑りゆき、ぶつかり合ってはその動きを止める。 イイ音だ…。 連想するのは、雪の道。少々凍って押し固まって上を歩く時の、あの濁音。――ずっとまみれて…

妖精の生地仕込み ~ディヤルバクル②

トルコ南東部、ティグリス川上流に位置するディヤルバクル。その中心部は、「新市街」と「旧市街」とからなっている。 「新市街」はその名から察せられる通り、整備された大通り沿いに銀行や高級ホテル、大型ショッピングセンターや、超有名ハンバーガーチェ…

平型パン世界 ~ディヤルバクル①

トルコ南東部に位置する町・ディヤルバクル。 郊外のバスターミナルに到着したのは、まだ真っ暗の夜明け前。明るくなってから町まで移動しようと、ターミナル内でジッと待っていたから、宿を見つけて荷を下ろすまでに結構時間は経っていた。というわけで、私…

薪パン ~カイセリ

トルコの中部・カイセリ――冬。 早朝、バスで到着すると、既に雪が、道路を、狭い路地を、塀を、建物を、街路樹を――町を占拠していた。 ボコボコとした白い大地を乗り越え、踏みしめながら前へと進むも、舞い落ちてくる雪と霧で数メートル先が見えない。町中…