主に、旅の炭水化物

各地、食風景の点描

ベトナム中部・フエ

市場で朝食。

フエには、米粉やデンプン製生地に、エビを具としてあしらった「エビ点心」が各種ある。

改まった食堂でも食べられるが、市場でも発見できる、庶民にとっての日常の味だ。ちまきのように、一つ一つをバナナの葉で包まれているのを籠に盛り、「いらんかね~」と売り歩いているのをつかまえたり、皿や箸と一緒にいつもの定位置に構え、風呂用だか足置き台だかの低い椅子を用意して客待ちしているおばさんの処で腰を下ろすのが、値段としてもお手軽である。

売り手の周囲をぐるっと取り囲み、くっちゃくっちゃと「音」を食んでいる輪の中に座る。「頂戴」と言うと、食べる分だけ、包みの葉っぱをハラハラとはだき、ボトッと皿の上に落としてくれる。

形状の異なる三種をそれぞれ。

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  左(バイン・ボロック)…透明な、葛饅頭のような弾力の皮の中には、エビと、豚   の脂身。エビは「干しエビ」の感じ。皮の弾力の強さは、タピオカのようだ。

 上(バインナム)…薄い米皮に、エビソボロ。

 下…柔らかぁい米皮の上にある黄色い部分は、エビというよりイモのような卵のような感触。

三者三様。特に、「バイン・ボロック」の、モチとコンニャクを合わせたようなブリンブリンの弾力に、周囲の客の頬の動きを納得する。

が、葉っぱで包み、蒸して出来上がる角のなさが、胃に優しそうなイメージをもたらす(イメージだけ)。小さいから幾つもを、ペロッと食べてしまうのだが、やはり米・デンプン製品であるからして、結構腹にくるのだ。

どれもヌクチャムと呼ばれる、ベトナム魚醬・ヌクマムを使った甘酸っぱ辛いタレを付けて食べる。

お客は、スッと座り、座ったら立ち…と、ソフトクリームを舐めに来たかのように、あっさり回転がいい。

お手軽――庶民の味だからこそ、妥協がない。