主に、旅の炭水化物

各地、食風景の点描

お菓子の家へ ~キルギス・オシュ

これから、朝食。…のはずなんだが。 目がチカチカするというか、「ナゼ?」――クエスチョンが宙に飛ぶ。 朝食として、「パン」というのは、分かる。 お皿のような、いやお盆のようなパンが三枚重なり、薄いピンクに花模様を描いたテーブルクロスの上に載せら…

「餅」の楽しみ・回教系① ~西安

イスラム教は中国で回教・或いは伊斯蘭教と表される。(ここでは回教と呼ぶことにする。)中国でイスラム教徒といえば、まず中国西部・ウイグル自治区に住まう「ウイグル人」が思い浮かぶだろうか。ほぼイスラム教徒であり、中央アジアのトゥルク系民族に起…

遠野の餅② ~胡桃を擦る

「和風版」である。 すり鉢と、回る「ハネ」をつけかえれば、見覚えある姿になる。洋菓子屋の、シャカシャカと回転して生クリームを泡立てるぼんぼりの骨組み・ホイッパーのついた、あの機械。ミキサーだ。 「ハネ」…というか要は回転してモノをかき混ぜるウ…

遠野の餅① ~胡桃ダレをつけて

しゃぶしゃぶのゴマダレ。或いは田舎味噌――とも、ちょっと違う。コルクをもう少し深く、暗くした色だ。 「ソレ」に、水をスプーンで一杯ずつ、恐る恐ると加えてゆく。もう少し、もう少し…?「売り」に出していたのは、こういう色じゃなかったはずだ。まだ、…

「フランジャラ」に駆ける青春 ~トルコ・ドウバヤズット① 

ザーッ、ザーッ、ザッ、ザッ…。 「窯」の中から次々と現れるパン。引き出されるその勢いで青色の台の上を滑りゆき、ぶつかり合ってはその動きを止める。 イイ音だ…。 連想するのは、雪の道。少々凍って押し固まって上を歩く時の、あの濁音。――ずっとまみれて…

泡世界への扉 ~チェンナイ

「軽いから土産にいい」 とは、よく言われる紅茶だが、インドやマレーシア、トルコ、イラン、ビルマ…あとどこで買い込んだろうか、一度たりとも「軽い」などと思ったことはない。「閉じる」ことなんて忘れたような、バックパックのチャックは、エイエイと強…

妖精の生地仕込み ~ディヤルバクル②

トルコ南東部、ティグリス川上流に位置するディヤルバクル。その中心部は、「新市街」と「旧市街」とからなっている。 「新市街」はその名から察せられる通り、整備された大通り沿いに銀行や高級ホテル、大型ショッピングセンターや、超有名ハンバーガーチェ…

魔女のパン ~シェキ

アゼルバイジャン北西部の町・シェキ。ロシアと国境を接する、コーカサス山脈のふもとにある町だ。 夜十一時に首都バクーを発った夜行バスが、そのバスターミナルに到着したのは朝六時頃。ベトナムの市場ならば、既に脂ののった活動時間である。が、この世界…

窯入れ ~サワンナケートのカオチー③

昔ながらの木造住宅を思わせる、深い茶色の木箱。着物用桐タンスのようなその大きさの中には、真っ白な生地たちが、じっとおとなしく待っていた。 思い浮かぶのは、スヤスヤと眠る猫の、グーにした手。…ってべつに毛が生えているわけじゃないんだけど、何と…

熱工房 ~ サワンナケートのカオチー② 

カッとんだ太陽の光を受けた、濃い木陰。 そんな、シンとした暗さに「工房」はあった。 埃のような、木材のような、いや、味噌のような――?倉庫の中のように、そこに在るさまざまなものがじっと息を潜めた匂いが、七、八坪ほどの空間を纏っていた。だが、言…

平型パン世界 ~ディヤルバクル①

トルコ南東部に位置する町・ディヤルバクル。 郊外のバスターミナルに到着したのは、まだ真っ暗の夜明け前。明るくなってから町まで移動しようと、ターミナル内でジッと待っていたから、宿を見つけて荷を下ろすまでに結構時間は経っていた。というわけで、私…

「餅」の楽しみ ~葱餅

中国の、「餅」。 その中でも「定番」とされるものの一つが「葱餅」である。…って日本で「『ねぎもち』いかが?」と聴き慣れているからして(試食で)、私はついそう言ってしまうんだが、これは中国では「葱花餅(ツォホアピン)」或いは「葱油餅(ツォユウ…

サワンナケートのカオチー  ~具入り点描

寿司職人にも劣らないだろう、次にやることが分かっているからこその、休みない手。 「何をどのように入れてくれるのか」の観察に目を凝らすこちらの前で、サラッとした表情を変えることもなく流れを止めないのは、想像としては七、八つぐらい年上だろうか、…

タイ・コンケン ~お土産をどうぞ

どこもかしこもがベトつく肌。滴る汗がまたいやらしく額を頬を這いずり、イライラを逆なでする。喉の奥底から、ヌメッた息が上がってきて、もうどうしようもなくなる。 そんな中で目の前にある、ケーキ――を包んでいるビニールの濁りを見ただけで、指がヌメっ…

伝統的「パンケーキ」 ~シビウ

赤茶けた煉瓦の塀は、所々が剥がれ落ちて粉を吹き、荒れた肌を晒している。石畳に染み付いた、あたかも木洩れ日でできた影のようなグレーの斑模様が、「時代」をいっそう漂わせるようだ。 ルーマニア中部・トランシルヴァニア地方の町、シビウ。 朝八時にな…

「ワッサン」の優しさ ~ポンデチェリー

疲れた…。 『「クリスマス」には避けるべし』――とあったガイドブックのお触れ書き通り、インド南端部のヒンドゥー教聖地・ラーメーシュワラムで、「宿無し」事態に陥った。クリスマスや年明け前後は、インドにおいても長期休暇をとる時期であり、「聖地」は…

餅の楽しみ ~西安

食堂の炊飯器ならば、このくらいはあるだろうか。――フタが、である。大人が頭上で両腕をあげ、「オッケー」と大きなマルをつくるよりも、まだ大きいと思う。 そのフタをめくれば、鉄板。電気仕掛けのやつが、その円周をちょうどすっぽりと囲む台に埋め込まれ…

黒パンよこんにちは ~チェルノウィツィー

ウクライナ。バスでルーマニア国境を越えて数時間、「チェルノウツィー」という町にやって来た。 …んだけれども、辿りついた宿のオーナーは英国人。その家族、いや友人にも見えない、お手伝いさんのように掃除洗濯雑用をやりこなす、ひょろっとした中年のよ…

シベリア鉄道 ~ロシアの中の故郷 

「シベリア鉄道」初めの第一歩は、ロシア極東の町・ウラジオストクからイルクーツクへの三泊四日。三等寝台車での旅である。 車内は通路を挟んで両側に二段ベッドが配置され、片側は進行方向と直角(頭か足を窓に向ける)に並び、もう片側は、窓に体を沿わせ…

ハム輝くカンボジア ~ストゥントゥレンンにて

東南アジアの国々のうち、かつてフランスの植民地下に置かれたのは、ベトナム、ラオス、カンボジアである。独立して時は流れても、「かの時代」の証明ともいうべきものが、生活習慣の中にポッと混じっているということに、部外者であっても気付くことができ…

ラオス・ 求む「焼き立て」

信念を焼き込めたような、見事な焼き色。鎧をまとっているかのような厚い皮を蹴破るほどの「えぐれ」には、活きがいいという表現を通り越した、「雄叫び」とでもいうエネルギーを感じる。 「フランスパン」の中でいうならば、大きさは「バタール」に当てはま…

ヤンゴン・道端の連係プレー

んんんんん、と、揺さぶられる。 焼き立て――となると、特に腹が減ってもなくとも、惑わされる。 「お焼き」か。ジュワァァァ、パチパチパチ…と、油の音が耳を引っ張った。駅の改札口前でやっている「大判焼き」よりは一回りぐらい大きいのが、水溜りのような…

タシュケント・タイプ2 ~座布団の快感

「円盤・平型」・もう一種類。 直径も同じ程度だが、豪華な『額縁』――に比べれば、えらくシンプルに映る。 やはり、中心に比べて円のふちに厚みがあるのだが、「額」を浮かべるほどではない。いかにも「見て」と言いたげな、ゴテゴテとした顕著な彫刻模様な…

タシュケント・タイプ1~華麗なる額縁

早朝から、焼き立てが並ぶ。あっちにも、そっちにも、ここにも。 様々な作り手のパンが、市場には寄り集まってくる。この地のパンの特徴とは、平べったい、直径三十センチほどの「円盤型」であることだが、ざっとみてタイプは二つ。 まずは、「額ぶちパン」 …

薪パン ~カイセリ

トルコの中部・カイセリ――冬。 早朝、バスで到着すると、既に雪が、道路を、狭い路地を、塀を、建物を、街路樹を――町を占拠していた。 ボコボコとした白い大地を乗り越え、踏みしめながら前へと進むも、舞い落ちてくる雪と霧で数メートル先が見えない。町中…

ベトナム中部・フエ

市場で朝食。 フエには、米粉やデンプン製生地に、エビを具としてあしらった「エビ点心」が各種ある。 改まった食堂でも食べられるが、市場でも発見できる、庶民にとっての日常の味だ。ちまきのように、一つ一つをバナナの葉で包まれているのを籠に盛り、「…